会長挨拶

第2回日本神経消化器病学会セミナー 会長
東北大学大学院医学系研究科心療内科学分野
 金澤 素

 2022年10月23日(日)、順天堂大学本郷キャンパスにおきまして、昨年に引き続き第2回神経消化器病セミナーを開催させていただくことになりました。 このような機会をいただき大変光栄であるとともに、身の引き締まる思いで一杯です。

 近年、機能性消化器疾患が着目されるようになり、数多くのエビデンスが集積され神経消化器病学は新たな展開を迎えています。 我が国でも疫学調査にて過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアを含む機能性消化管疾患全体の有病率は約4割であることが 報告されており(Sperber AD, et al. Gastroenterology 2021)、日常診療においてもよく遭遇しやすい疾患群です。 一方で、一見検査で異常所見が認められないの様々な消化器症状を呈する”やっかいな”病気と感じている先生方もいらっしゃるかもしれません。 こうした状況から、若い先生方に消化管機能や脳腸相関についてもっと興味を持ってもらい、これからの神経消化器病学を牽引して欲しいという 三輪洋人理事長の理念から、2019年に教育セミナーを企画・運営するための学術委員会が永原章仁委員長を筆頭に組織されました。

 今回のセミナープログラムを前回セミナー参加の先生方からのアンケート結果と学術委員会での活発な議論を踏まえて作成しました。 メインテーマを「消化管運動異常性と機能性消化管疾患は似て非なるもの?」として、 先生方の明日の診療・研究に役立つような神経消化器病学の基礎知識とトピックスを種々ご用意しました。 また、学会員に限らず様々な立場の方々にご参加していただきたいと考え、 プログラムに臨床・初学者用のセッションには”Basic”、研究・専門家用には”Advance”とラベル付けしました。

 消化管運動異常症(消化管生理学的診断)と機能性消化管疾患(主として症状診断)の概念は、必ずしも同義ではないのですが、 オーバーラップする症状・病態生理が少なくありません。両者の相違点とそれぞれの治療戦略を正しく理解することによって、 「一見検査で異常所見が認められないのに消化器症状を訴える患者さん」に対する診療・研究が少しでも円滑に運ぶことができましたら大変うれしく思います。

 最後になりましたが、学術委員の先生方はもとより、本セミナーの趣旨に賛同していただきました各協賛・協力企業様、 学会事務局関係各位ならびに本セミナー運営に携わっていただきましたスタッフの方々には心より感謝申し上げます。

 さあ皆様、1日限りのセミナーですが、この神経消化器病学の醍醐味を一緒に味わってみませんか。

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